【第13回 大学時代の研究】理科(物理) 園田勇輝先生 | 東明館中学校・高等学校

◆教員リレーコラム◆

第13回の担当は・・・園田勇輝先生(理科(物理))

お題『大学時代の研究』

  

 10年ほど前の話になりますが、私は大学でゴムメタルと呼ばれる金属について某企業との共同研究をしていました。ゴムメタルというのは力を加えると変形し、力を取り除くと元の形状に戻るような名前の通りゴムのような合金のことです。金属は弾性率が低い(変形しやすい)材料は強度も低いというのが一般的でした。しかし、このゴムメタルでは低弾性でありながら、高強度というそれまでになかった全く新しい金属でした。中学で学習するフックの法則に従わない特性を持っています。その特性から加工がしやすくメガネのフレームやゴルフクラブなどに利用されていました。このゴムメタルの欠点の1つはチタンなどの高価な金属が使われており、非常に高価なところです。私の研究では、ゴムメタルを鉄や銅などの安価な合金で作り、ゴムメタルのような特性がないか調べる研究でした。

 

 ゴムメタルの育成では上下から異なる金属棒を中央の熱源に向け動かし、中央で溶かしながら異なる金属同士を接合し合金にしていきます。温度が高すぎると流れ落ちてしまい、低すぎると固まってしまうので、接合面を観察しつつ手動で温度を変えていきます。よって金属の育成途中はあまり離れることが出来ません。1時間で1~3㎜ずつ合金を作っていき1~3日大学に泊まりながら合金を何度も作っていました。出来上がった合金は押したり引っ張ったりし弾性を調べたり、電子顕微鏡やX線とブラッグの条件(高3で学習)を用い原子構造を調べたり、成分比を調べたりしました。大学から大学院までの数年間の研究はその繰り返しでした。

 

 この研究内容で物理に活かせていることは少ないですが、良かったことを挙げるとすれば、温度調整しながら1時間で数㎜ずつ出来上がっていく金属を数日間眺め続けることにより、忍耐力がついたことかと思います。

 

 理系に進む生徒は大学で研究があると思います。そこでは、高校までにはなかった深い探究があると思うので探究の楽しさを学んで欲しいと思います。そして今は大学や社会に出る準備期間です。将来に向け1日1日を大切にして欲しいと思っています。

 

毎週金曜日更新! 次回は菅沼正規先生(英語) お題は『行動によって事態は変わる!』です。