【第3回 人間万事塞翁が馬】数学科 栗原淳先生 | 東明館中学校・高等学校

◆教員リレーコラム◆

第3回の担当は・・・栗原淳先生 (数学)

お題『人間万事塞翁が馬』

 

 

人間万事塞翁が馬という言葉があります。人生において、何が幸いするかわからないということわざです。私の短い人生を振り返ってみても、本当に何が幸いするかわからないなと思わされます。

 大学は物理科に入学し、物理学の研究者になろうと思っておりました。が、物理学で使われる数学に非常に魅力を感じたため、他大学の数学科へ編入し、そして数学の研究者になろうと、博士課程まで進学したのですが、指導教授との折り合いがどうしても悪く、博士2年の時に博士課程を退学致しました。失意の退学でした。

 ところが、博士課程在籍中に教員免許を取ることになり、教育実習の申し込みまで済ませていたため、それを放り出すことは出来ません。苦肉の策として、科目等履修生として大学に籍を残し、教育実習に行くことを決めました。その教育実習の説明会が大学で開催されたとき、説明会の最後に、X高校という高校が教育実習生を募集しているので、希望者は是非、X高校で教育実習をしてほしいと呼び掛けられたのです。この高校は、発達障碍などの支援が必要な生徒を積極的に受け入れている高校で、将来、教員として教壇に立つ際には、ここでの教育実習がきっと良い経験になるだろうとのことでした。   

 そのとき、本当に偶然なのですが、X高校の教育実習の責任者である、Y先生が、私の前の席に座っておられ、その場でくるりと振り返り、「君、X高校へ行ってみないか」と言われたのです。特に断る理由がないと思った私が、「はい、わかりました」と答えたところ、Y先生が名刺を下さり、「ここに連絡をして下さい」と言われたのです。

 数日後、Y先生から私に直接電話があり、X高校で学生支援員を募集しているので、週に2回、X高校に行ってくれと頼まれました。X高校まで、電車を使って、片道3時間、往復6時間の通勤で、移動は大変だったのですが、生徒の悩みを聞いてあげたり、野菜を一緒に作ったり、老人ホームへ慰問に一緒に行ったりなど、生徒達と信頼関係が築ける良い経験となりました。

 そうして、X高校での教育実習が始まったのですが、この教育実習の最中に、なぜか私の携帯電話に、Z高校という私立高校の教頭先生から留守電が入っていて、連絡をとってみると、Z高校で産休の先生が出たため、非常勤で数学を教えてほしいと頼まれたのです。ところが、私はまだ教員免許を持っておりません。「現在、教育実習中で、まだ教員免許を持っていないのですが、よろしいのですか」と言ったところ、「ご心配なく。臨時免許を申請しますので大丈夫です」とのことでした。そこで、Z高校の非常勤講師になり、その後、その産休の先生が育休を取られたため、そのままZ高校の常勤講師になり、そこから私の教員生活が始まり、現在に至ります。

 大学の博士課程を退学したときは、自分には何と運がないのだ、と思っておりました。しかし、それがなければ、X高校に教育実習に行くことも、教員になることもなかったでしょう。そう考えれば、人生において何が幸いするかわからない、まさに、人間万事塞翁が馬であると思います。

 

毎週金曜日更新! 次回は古賀洋先生(保健体育) お題は『東明館野球部』です。