【第40回 洋書の話(本屋の仕事パート2)・続】事務 宮崎秀男先生 | 東明館中学校・高等学校

◆教員リレーコラム◆

第40回は・・・宮崎秀男先生(事務)

お題『洋書の話(本屋の仕事パート2)・続』

 

 

 洋書コーナーでの、いくつかエピソードを書く。

 ジョージ・エリオットのペーパーバックを毎週注文していく人がいた。10冊以上はあっただろう。後に「ジョージ・エリオット」の研究書を出されたようだ。ジョージ・エリオットというのは、実は女性の作家で、ペンネームで、男名のジョージと名乗っていた。後に正体は知れる。今確認のために検索していたら「ジョージ・エリオットの名言」というのを発見。しみるものがある。

 英文学を学ぶ人にはなじみのある、ウイリアム ブレイクの『ソングス オブ イノセンス アンド エクスピアリアンス』日本語訳『無垢(童心)の歌・経験の歌』の注文が時々ある。学生さんが、(ウイリアム ブレイクの本ですけどと)書名を『ソングス オブ』と言い始めると、その先を聞かずに『ソングス オブ イノセンス』と声に出してタイプに打つ。(そう、それです)。学生さんも安心する。中は、カラー版の版画があり、神様みたいな男が天上からコンパスを持って地上を照らしているようなものがある。

 ワトソン&クリックの『ダブルヘリックス(二重らせん)』のワトソンの著書が京大の教科書になっていた。『モレキュラーバイオロジー オブ ジーン』。教科書を買いそびれた学生が後から注文に来る。『二重らせん』の頃のワトソンは、ガリガリに痩せたひょうきんな顔の写真だったが、教科書の写真では、いかにも、という写真になっている。『コスモス』のカール セイガンのような男前に写っている。京大の教科書売場を見ていると、ほとんど英語の原書である。

 逆にとなりの和書売場で、外国人の留学生が『群書類従』を注文していて、何日おきかにやってきて、担いでいく。『群書類従』が机の上に積まれているのを見ると、外国人もやるなあ、と感心したことがある。日本人学徒は、大学や、学部の図書館にあるのを利用するのだろうが、外国人は全部買う。(あっぱれ、と思った)

 

 週末土曜午後、ご老人と報告書をもって河原町の丸善京都支店にいく。京大前の百万遍から、三条京阪でバスを降り、そこから先斗町(ぽんとちょう)の狭い路地を抜け、丸善の裏手にでる。先斗町には通り抜けできる路地と行き止まりの路地があり、一人で初めていくにはちょっと勇気がいる。

 丸善の事務所にいくと、顔なじみになった同郷(福岡県)の方から、店に出せない(?)洋雑誌を時おりいただくことがある。ペンギンブックスに、時々ポスターが付いてくることがある。両手をひろげても足りないくらいの大きなポスターである。著名な作家の新刊や改訂版が出る時、付いてくる。

 ある時、ざっくりとしたジャケットの胸ポケットに一輪の花が挿してあり、そのジャケットが花を中心に楕円の形でたわんで、壁に掛けられていた。うまい!、と口に出る。D・H・ロレンスの本なので、一度読んだ人にはわかる仕掛けになっている。英語圏のポスターにはこうした象徴をさり気なく表わす遊び心がある。

 

毎週金曜日更新!次回お楽しみに・・・