【第35回 テネシーのクリスマス】英語科 ダニエル・ハドルストン先生② | 東明館中学校・高等学校

◆教員リレーコラム◆

第35回の担当は・・・ダニエル・ハドルストン先生(英語科)②

お題『テネシーのクリスマス』

 

 

 毎年の今頃は、この決まり文句が聞こえてきます。「あっという間にクリスマスが来る。(Christmas starts too early.)」と。ハロウィーン(10月31日)が終わるや否、クリスマスの飾り物が現れ、クリスマスの歌が街中に流れたりしてクリスマスシーズンが始まります。人によっては早すぎると思うものです。

 ブラック・フライディ(11月下旬)を境目として、クリスマスの買い物が本格的になります。ブラック・フライディとは、感謝祭の翌日の呼称です。感謝祭は11月の第4木曜日に祝われるので、その翌日はいつも金曜日です。アメリカの大半の仕事は週休二日制だから、非常に多くの人は、感謝祭と土曜日に挟まれている金曜日に年休を取り、早朝からバーゲンセールに殺到します。なぜ「ブラック」と呼ぶかと言えば、売り上げが年間で最も高いので、赤字を出している店でも黒字に入るチャンスがあるからだそうです。

 その日、群衆に混じってリストに載せた人たちの完璧なクリスマスプレゼントを探すのは、面倒くさいと同時にわくわくします。どこを見てもクリスマスの飾りがあり、どの店に入ってもクリスマスの歌が流れています。

 クリスマスの商業化を嘆く声は毎年少なくないですが、人々は愛する人にプレゼントをあげたいものだから変わりそうにありません。

 それに、クリスマスは買い物やプレゼントだけというわけではありません。日本で年賀状が送られるように、クリスマスカードを送る人が多くいます。たまに、連絡が途絶えた友達から久々の手紙も来ます。私の母は毎年カードを送り、もらったカードを家のあちこちに飾ります。

 コンサートホールで、道端で、人家の扉の前でも、クリスマスの歌を歌う合唱団も現れます。十代の頃参加したことを覚えています。全然知らない人の家に行ったわけではなく、教会のグループで教会のメンバーの家に行きました。残念ながら、知らない人の家に行くことはもはや安全とは言い切れません。

 クリスマスが近くなると不幸なことに遭った人々のために沢山の寄付金が集められます。多くの人々は施しをする気分になっています。特別な活気が漂います。わくわくさせる、人に何かしたくなるその気持ちは、Christmas spirit(クリスマス精神)と呼びます。その精神がない人はディケンズの名作の影響でScrooge「スクルージ」と(ユーモアを込めて)呼ばれます。

 小さい頃、家族と親戚は12月24日(クリスマスイブ)に祖父母の家に集まる伝統がありました。食事をしたりプレゼントを交換したりしました。テレビでクリスマスのアニメスペシャル、或いは毎年放送される名作映画「It’s a Wonderful Life」(「素晴らしき哉、人生!」)を見ました。テレビの天気予報のアナウンサーは毎年レーダースクリーンでサンタの橇の位置を示しました。彼は近いので早く寝ないといけないというメッセージでした。

 家に帰った後、寝る前にサンタのためにクッキーとミルクを出しました。ベッドに入ってもわくわくしていて寝ることは難しかったです。

 子供たちにとって、翌朝に早起きしてクリスマスツリーに駆けつけて「サンタから」のプレゼントを開けることはクリスマスの醍醐味です。もちろん、クッキーの皿とミルクのグラスは空になっています。両親はプレゼントを開ける瞬間の写真を撮りました。そして、その騒ぎが落ち着いたら、皆はしばらくリラックスします。昼食は、親戚がまた集まって食事をしますが、前日のわくわくする緊張感に代わって、クリスマスの心地よい余韻を楽しんでいる雰囲気でした。食事の後、男性は必ずテレビをつけてアメフトを見ました。

 今はちょっと違います。家族と食事をしたりプレゼントを交換したりする伝統はまだありますが、両親はまだ孫がいないので、それほど賑やかではありません。テレビは常にクリスマス音楽を流すチャンネルに設定されています。書きながら恋しくなります。

 多くのクリスチャンはクリスマスをイエス様の誕生日として祝います。その一方、プロテスタント派の一部は、イエス様の誕生日は聖書に載っていない以上、余計なことをしないように、祝日としては祝っても、聖なる日として祝いません。私の家族はそうです。

 両方の気持ちはわかりますが、キリストの誕生として祝うべきかどうかという疑問を聞くたびに、新約聖書「ローマ人への手紙」14章5節の言葉を思い起こします。「ある人は、この日がかの日よりも大事であると考え、ほかの人はどの日も同じだと考える。各自はそれぞれ心の中で、確信を持っているべきである。日を重んじる者は、主のために重んじる。」

 それに、ある牧師の見解も思い出します。「理由は何であろうと、世の中はキリストの誕生を思い起こしたいのなら、それが歓迎すべきことでしょう」

 一人のクリスチャンとして、「アメン」としか言いようがありません。

 2005年から2019年まで毎年冬休みの間にアメリカに帰省しました。母にとって特に大切な時間ですから。でも、去年も今年もできなくなりました。

 ですから、皆さん、クリスマス或いは新年のために家族と集まるとき、その時間を大切にしてください。

 

毎週金曜日更新!次回お楽しみに・・・