【第32回 思い出】数学科 寺岡恵佑先生 | 東明館中学校・高等学校

◆教員リレーコラム◆

第32回の担当は・・・寺岡恵佑先生(数学科)

お題『思い出』

 

 

 その日は、とても暑かった。高2の夏休みのある日、午前の夏季補講を終えると、PC部の部員が私を含めて4人部室に集まっていた。普段はPCで遊んだりして話声で満ちているが、部室に空調設備はなく、暑さでその日は皆ぐったりしていた。今日はもう帰ろうかなとも考えたが動く気力もない。すると私以外の誰かが、近くのコンビニにアイスを買いに行こうと提案した。財布とケータイを持って学校の外に出る。学校を一度出てまた戻るという普段しない行動が非日常的で、ちょっとした冒険のように思えた。コンビニでは涼しい空間に歓喜し、たくさんの種類の中からどのアイスを買おうかじっと悩み、やはり非日常感に浮かれていた。部室に戻り、それぞれが買ったアイスを食べ始める。学校でアイスを食べるという罪悪感は暑さで溶けきっていた。部室の暑さは変わらないはずなのに、さっきと違い皆笑顔になっている。いや、もっと前から、コンビニに行く途中から、照り付ける日差しを受けながらも笑顔になっていた。

 

 これが私の高校時代の思い出。文化祭や修学旅行など楽しい行事はたくさんありましたが、一番の思い出は何かと聞かれたらこのことが真っ先に頭に浮かびます。アイスを買うだけという漫画だと描かれすらしないような、今思えば平凡過ぎる日常の1コマですが、いつまでも私の胸に残り続けるでしょう。実際、そのときの私はアイスを食べる皆を見ながら、こういうのが意外と思い出になるのかもなあと考えたのを覚えています。「早く大学生になりたい」「大人になってこんなことしたい」と考えることもありましたが、大切なものは「今」という時間にあるんだということを思い知らされる、小さな思い出です。

 

毎週金曜日更新!次回お楽しみに・・・