上野栄子訳『源氏物語』が図書館に寄贈されました | 東明館中学校・高等学校

上野栄子訳『源氏物語』寄贈に当たって

理事長 慈道 裕治

上野栄子氏口語訳『源氏物語』を本校図書館に寄贈するに当たって、経緯を簡単に紹介します。寄贈本は上野栄子氏のご子息、数学と和算研究の大家である京都大学名誉教授上野健爾先生より頂いて所蔵していたものを先生のご了解を得て寄贈しました。

栄子氏は、1925年福岡県に生まれ、熊本県立第一高等女学校(現:熊本県立大学)を卒業、半年余り母校で国語の教師をされました。その後、結婚・出産・育児を経て、源氏物語の口語訳に独学で取り組まれ、80歳の2005年に自費出版に着手されました。2006年には第1巻、「源氏物語千年紀」にあたる2008年に最終巻を出され、全8巻の出版を完了されました。その後、『日本経済新聞』(2008年4月18日)で報じられると購読希望が多く寄せられ、自費出版と同じ装丁で日本経済新聞社から刊行されました。今回寄贈の本は自費出版300セットの1セットです。

栄子氏は源氏物語に興味を持つようになった経過を日本経済新聞紙上で次のように回想されています。「授業ではかま姿の小柄な先生が、机の間を縫って『いづれの御時か、女御、更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに・・』と抑揚をつけて朗読されるのを聴き、いつか源氏物語を口語体に直して見たいと思うようになりました。」18年に及ぶ家事と介護の傍ら口語訳を進められ、出版されたのが本書です。